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一方、
当のアユムはいまだにケイとシュストーユ内を歩いていた。
「俺、最近思ったんですけど、
アユムさん、コスミちゃんが来てから気が抜けていませんか?」
「え?」
それは私達がいたのと同じく、静かな廊下での出来事だった。
ただ違ったのは・・・、
そこはガラス張りで、ちょうど夕日が差し込めていたことだ。
床は赤々と照らされて、
ただひたひたと揺らめいている・・・。
立ちすくむアユムをケイが鋭い視線で見据えた。
「どうなんですか?
最近魔法の切れも鈍いし、注意も散漫でよりどころがないみたいに見えます。
前までは何でも努力して、物事にもひたむきであったのに・・・。
今のあなたは・・・、
まるで糸が切れた人形のよう」
「コスミちゃんが蘇って本当に良かったと思ったんだ。
もう、俺にやるべきことは無いよ・・・」
アユムは静かに言った。
そこには、
シュンもココも、私もいなかった・・・。
だから、アユムは私を「コスミちゃん」なんて呼んだのだ。
だって・・・彼の本当のポジションはそこにあったのだから・・・
「あとは見守るだけだ・・・。
あの子が、
どう生きようがもう自由にしたらいいと思う。」
アユムは疲れたように目を閉じて続けた。
ケイはそれに対してそっけなく呟く。
「そうですか・・・」
ー しかし、あなたは生きているのに!! ー
ー これからも生きてゆけると言うのに・・・ ー
ケイはそう心の底で叫びながら、
でも、声には出さず、
眉をひそめた・・・
・・・と、アユムはそんな彼に思わぬことを言ったのだ。
「でも、
ここまでこれたのはケイのお陰だよ。
きみみたいな友達がいたから、
ここまで進んでこれたんだと思う・・・」
「え・・・」
ケイは本当に驚いた表情をした。
アユムの言葉は澄んでいて、ためらいが微塵も感じられなかった。
彼は本心から言ってくれているのだ。
でも、
それはケイにとって本当に嬉しかったけど、
次の瞬間には
すべてが悲しみにすりかわってしまったのだ。
「友達なんて言ってくれて、ありがとうございます。アユムさん」
ケイの声は
嬉しさのあまり震えてしまったのかもしれなかった。
それとも、実は込み上げてくるものに耐え切れずに
泣きそうになっているのかもしれなかった。
友達と言ってくれるのは本当に嬉しかった・・・
でも、本当は言わないで欲しかったのだ。これからずっと先に訪れるであろう別れが辛くなるから・・・
「ケイ・・・?」
うなだれるケイを、
アユムは幾分きまり悪そうにして見ていた。
こういうのはケイらしくない、とでも言いたげな表情だ。
しかし、ケイはそんなアユムの表情さえも見ずに
・・ただ、さっきの「友達」と言う言葉を胸に刻みつけていたのだ。
「アユムさん、
あなたはぶっきらぼうで昔から子供みたいなことを言ったりして俺を困らせていたけど、
とても素直で優しい人だった。」
「?」
アユムは首をかしげていぶかしげな表情をした。
ケイが何を意図してこんなことを言うのかが良く分からなかったのだ。
でも、ケイは気にせずに続けた。
「しかし、
あなたはそろそろ一人で歩かなければならない。
もう、俺やみんなの助けを借りている場合じゃない・・・」
そう言う彼の手には、
黒々渦巻く光球があった。
「な、なにを・・・」
身を引くアユムにケイは容赦をしなかった!
「時空よ!!!」
その黒い光はアユムを確実に飲み込んだかと思うと、
彼の意識を一気に奪った!!
「グッバイ、アユムさん。
また会いましょう。」
崩れ落ちてゆくアユムに
ケイは人知れず呟いたのだった。
「説明が無いのはちょっぴり痛いかもしれませんが、あなたの為です。
・・・負けないでください」
ーつづくー