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ザー−ザーザー−−−−

今度目がさめたのはまたしても病室のベッドだった。
ただ、さっきと違うのは、日が明るく差し込む昼間だということだ。
見ると、隣のベッドに突っ伏して泣いている女の人がいる・・・。
(・・・やめてくれ・・・この場面は・・・)
アユムは目を見開いてその女の人を見た。
自分の過去と照らし合わせた結果。この場面がいつのことなのか瞬時に判断したのだ!
しかし、そんなアユムに気が付いていないのか、
その女の人は突っ伏していた上半身をゆっくりと持ち上げる。
その瞳は恐ろしいほど虚ろだった。
「ごめんね・・・コスミ」
と一言。
力の無い瞳で見下ろすその先には、はたして空のベッドがあるだけであった・・・
(もう、本物はこの世に居ないんだ・・・。偽物は俺がアンドロイドとして作ったけど・・・)
アユムはその光景を見ながら苦い気持ちをかみ締めていた・・・。
(でも、俺は果たして道を誤ってはいないだろうか?
 偽物の量産は、本物の価値を下げるだけではないか・・・?)



ザー−ザーザー−−−−

目まぐるしい場面転換だった。
今度目の前に映っているのは夜の中、満開に花開いた桜の木だった。
そして、アユムは青々と生えている芝生の上に腰を下ろしているのだった。
ただ、服はいかにも病人のものだったし、ギブスはまだついたままだった。
「それで、キリハラくんはあの子を復活させたいのね・・・」
いきなり横から話し掛けられて、ビックリした。
見るとそれはユイカだった。
「え?」
アユムがぽかんとしていると、ユイカは首をかしげてこう言った。
「ごめん、私変なこと言った?」
「いや・・・。変なことは何も言ってないと思う」
アユムはとっさに否定した。ユイカはそれでも晴れない表情だ。
「そう・・・。
 もしかして・・・くるしい・・・??」
「は?」
「だって、キリハラくん。点滴勝手に抜いてきちゃったんでしょう?
 外に出るために・・・」
「あっ」
そこまで言われてアユムはやっと今いる状況が把握できた。
(さっきの場面の続きだ・・・)
あのことがあったあと、
数日して、アユムは無性に外に出たくなって、点滴を自らの手で抜いて病院の外へと出たことがあったのだ。その後、偶然ユイカにあった。彼女は時として唐突に現れるのだった。
(言われてみると・・・ちょっと気分が悪いかな・・・)
アユムは少しうつむいて思った。点滴がないとやっぱり苦しい・・・。
「皆はもう中学生になっているね・・・」
何も言わないアユムにユイカは芝生をブツブツとちぎりながら話した。皆とは、小学校の時のクラスメイトのことだろう。
アユムはこくりと頷いた。
「うん・・・。そうだね」
「でも私。キリハラくんの計画に賛成だよ?
 というか、むしろ協力したいって思ってる・・・。」
「・・・」
アユムはユイカの言っていることが分かっていた。
【計画】のことは、はっきりと覚えている。
だって、その計画は今まで続いているものなのだから。
「私には分かるんですもの。この計画は絶対成功するって・・・ね。
 アンドロイドを作るなんて、馬鹿げているけど面白いわ。
 コスミちゃんは必ず生き返る。・・・偽物として・・・」
ユイカは意味深げにささやいた。
「にせもの・・・?」
アユムは気持ち悪いのを抑えながら、必死にその意味を考えようとした。
でも、それよりも早く、
体の方が根を上げ出す。
「すごく顔色悪いよ・・・。やっぱり私の言ったとおり」
アユムが力なく、ぐったりしていると、ユイカは倒れる前にとばかり、アユムに木に寄りかかるように促した。アユムにとっては木の下まで移動するのさえも苦痛だったのだけど・・・。

いつまでも移動しようとしないアユムに、ユイカはおかしそうに微笑んだ。
「小学校の時のクラスメイトなら、ショウゴくんが手を貸してくれる・・・。
 キリハラくんはあの子苦手みたいだけど、
 ショウゴくんなら力も強いし、行動力もあるし、仲間に引き入れておいて損はない。
 私の勘だと、これから先大変な道のりになるから・・・絶対に協力者が必要よ。
 キリハラくんも無理してはダメ・・・。今は自分を見失わぬよう気をつけて・・・」
ユイカの微笑が闇の中に溶けてゆく・・・。

生暖かい、4月8日のころだった。



ザー−ザーザー−−−−


                    ーつづくー



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