ー 6 ー 幻影

「なんだか変な夢を昨日の夜に見た・・・。
 必然のみで形作られていく・・・繰り返しの世の中・・・。」
これはアユムの声・・・かな
「あはは、
 アユムさん疲れているからですよ」
こっちは少しこもった様な優しいコエ・・・
誰だろう?
意識も聴覚もあるのに真っ暗で何も見えないよ・・・
「もうちょっと休んだらどうですか?
 あとは俺が移植しときますから。
 大丈夫です。多分。
 だってこの細胞レンズを付けるだけでしょう?」
レンズ。

そこで私は分かった。
・・・「目を取り付けてもらっていなかった」んだって・・・


ー失ったからと言って悲しむ必要はない。
 何故かといえば
 この世には素晴らしく便利な発明があるからさ
 ・・・・・くだらん空想から生まれた・・・ね
 
 「偽物」・・・と言う概念だー


「あ、目がさめた?」
目を開くとそこには大学生らしき青年が立っていた。
声からして、さっきアユムとしゃべっていた人だと分かる。
「ここは・・・シュストーユですか??」
私が半ば、ぼーっとしてたずねると、
その人は穏やかに笑ってこう答えてくれた。
「そうだよ。
 よかった。メモリーは飛んでいないみたいだね。
 目の焦点合ってる??」
そ、そういえば目を取り付けたのこの人だったっけ・・・
「え?あ・・・、はい。大丈夫みたいです」
と私。
言いつつ横目で左の方を見ると想像したとおり、ソファーでアユムが眠っていた。
ついで周りを見渡すと、そこは意外とかたづいていて、金属製の実験道具らしきものでさえなんだか感じよく見えたほどだった。
青い照明もあるし、
・・・なんだか幻想的な空間・・・
「コスミちゃん・・・だよね?」
しばらく私の様子をみていたその人は首をかしげた。
「え?」
私はちょっと顔をあげる。
「名前だよ・・・。
 俺、アユムさんが話しているのしか聴いてなかったから・・・。」
あ、そうなんだ。
「そうです。ショウノ コスミ・・・」
私がとっさに答えると、
その人はかしげていた首を反対側にまたかしげてちょっと笑った。
「俺はユメナリ ケイ。高校三年生。
 シュストーユの新メンバーなんだ。
 まあ、早い話が君と同じってことになるね。もっとも、アンドロイドではないけど・・・。」

ーかなしむ
   ひつようはないー

アユムがかすかに動いたような気がした。
「どうしたの?」
ケイがいつの間にかコーヒーを手に持って、
不思議そうな顔をした。
「あ・・・なんでもないです。」
私はそういいながら、やはりアユムのほうを見ていたらしかった。
それを見てケイもそちらを眺める。
アユムは安らかと言うより疲れきった顔で目を閉じているようなきがした・・・
「アユムさんすごく頑張ってたんだよ。
 この人もとから徹夜とか・・・下手なのにさ。
 精神的にも肉体的にもかなりバッドな状態だろうから、
 ゆっくり休ませてあげてね。」
と、このとき私はふとあることに気が付いた。
そういえば、私どれくらい寝てたのかな?
ケイの話だと結構な日にちが経っているみたいだけど。
「・・・私の修理。どれくらいかかったんですか?」
私はちょっと覚悟して聞いてみた。
しかし、ケイの答えは予想をはるかに越えるものだった。
「まあ、いろいろ壊れていたから、二ヶ月はかかったね・・・。」
「二ヶ月!?」
うそ・・・
二ヶ月??
「長いと思った?
 でもこれでもすごく早い方なんだよ?」
と、ケイ。彼はもうアユムから目をはずして私のほうへと向き直っていた。
そしてちょっと笑ってこう言った。
「このままでいくと多分、アユムさんが起きるの2日後くらいになりそうだから、
 君はこのビルに泊まるといいよ。
 もちろんこの部屋じゃないところだけど・・・。」
「え!?」
急いで時計を見るともう夜中の1時半。
うう、そうだって分かったら急に眠気がさしてきた・・・
でも、こんな時間に家に居ないなんて・・・変な・・・気分
「あはは。
 大丈夫だよ。きみと同い年の子もここに来ているんだから。
 とにかく、施設学校に来たからには寝泊りもここですることになっているんだ。
 部屋はたしかずいぶん前にアユムさんが割り当てていたとおもうから・・・
 ちょっと待ってて」
ケイは優しくそう言って、そこら辺からいろいろ資料を引っ張り出しにかかった。
そして約10分間丁寧に調べた後、
一枚のプリントを取り出して「あったよ」という顔で私を見た。
「きみは506室。三人部屋だな。
 もうすでに二人入っているから、その子達と仲良くね。」
「は、はい・・・」
ケイに言われて返事はしたものの、
私はその二人がどんな人なのか知らないわけで少し心配になった。
ちゃんと話せるかな・・・とか・・・邪険にされないだろうか・・・とか・・・
こんなどうでもいいことで
なぜか・・・ひどく臆病になっていた。
自然に表情がこわばった。
気が付いたらうつむいていた。
手が湿った。歯がガクガクした。
まるで、過去に傷を持っているかのようだった・・・

そんな私の心情を感じ取ったのかもしれない。
ケイはちょっと砕けた感じでこういってくれたのだった。
「あまり、心配とかはしない方がいい・・・
 悩むことがあったらそれは明日考えるべきサ」

優しい瞳だった・・・
そう、
優しい瞳「だった」・・・ケイは・・・・


                         ーつづくー


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