ー 7-2 ー

しばらくして、
首にあてられているのはステッキのようなものだと分かった。

「・・・おまえは・・・誰だ」
相手が聞いてくる以上答えないわけにはいかなかった。
「ショウノ コスミです」
私が小さく言うと、その人は
「そんな名前・・・・聞いたことが無い・・・。
 一体どうやってここに入ったんだ・・・?」
と問い掛けてきたのだ。
私はこの言葉から、この人物がはじめから敵意を持っていた訳ではなかったことに気がついた。
純粋に警戒しているだけのような、そんな口調だったから・・・。

だから、私は今度は前よりも大きい声で答えた。
「ユメナリ ケイという人に案内されてきました」
するとその人物。
一瞬の間の後、とんでもないことを言った
「・・・。はめられた」

「え??」
今なんて言った?
「だ・か・ら!
 僕らは・・・はめられたんだよ。ケイに。」
その人はやけに悔しそうな声でしゃべった。
「は??」
いわれてもまだ意味が分からないんだけど・・・。
ぽかんとしている私を見てか
その人はちょっと面倒くさそうに。
「つまりイジワルされたってコト・・・
 新米みたいだから言うけど、
 ここではIDを押した後30秒の間に青いボタンを押さなきゃいけないことになっているんだ。
 もし、30秒以上たってからボタンを押した場合
 敵あるいはシュストーユ外の人間とみなす事になってる」
「そ、そうなんですか」
ということは、
ケイさんはワザと、私に青いボタンを押させた訳ですか??
でも・・・
「でもなぜ??」
そう、それはちょっと引っかかっていた。
だって、あのケイさんがそんなことするハズないもん。
「なぜって僕も知らないよ・・・。
 ただ、あの人。
 新入りにはいつもこういう変ないたずらをするんだ・・・。
 僕なんか二週間前にここに来たんだけど、
 そのときは何も知らないシュストーユ生徒に技掛けられて死ぬかと思ったよ」
とその人はちょっとむくれた声で返した。
ところで、
こうしていると普通に会話しているように見えるかもしれないけど、
まだステッキのようなものはおろされていなかったりする*
それに声は良く聞こえるのだけれど、
暗くって相手の顔がよく見えないんだよね。
現に声だけじゃ男の子か女の子かもわからないような声色だったから、
私はなんて呼んだら良いのかちょっと困っていた。
「あの、この棒を下ろして、電気をつけてくれませんか・・・」
と私はついにしびれを切らして訴えた。
「あっと、ごめんよ」
その人は状況を忘れていたらしく、その申し出を快諾した+

パチリ

日常でおなじみの電気のスイッチが押された音がしたかと思うと、
部屋中に光が満ちあふれた。
そこでもちろん私は相手の顔がわかったわけだけど・・・
その人はやっぱりというか、男の子だった。
「僕」って自分を呼んでいたことから、当たり前と思う人も居るかもしれないけど、
女の子でも「僕」って言う人はいるし・・・ね*
そして彼は
男の子にしては長めの髪をしていて、髪の色は私と似た水色のような色だった。
しかも左の目元にはホクロがあるし、
女の子だったらどんなに可愛いかってゆーくらいです・・・。
ふう、さらり+
でも、本人の方は私の視線の意味がどうもよく分かっていないらしく、
怪訝そうに目をそばめた。
「・・・どうしたの?」
「あ、いえ。なんでもないです」
わたしがはっとして応えると、その人はちょっと困った顔をして
「いいよ、敬語使わなくって・・・」
とステッキのような棒を下ろしながらつぶやいた。
そして、私のほうに改めて向き直ると少し微笑んでこう言った。
「それより自己紹介・・・まだだったね。
 僕はリスマ シュン。さっきも言ったけどここに来て二週間。
 年齢は一応15歳だよ。まあ、童顔だからそうは見えないだろうけど・・・」
あ・・・、私と2歳違いだ♪
そう思ったとたん表情がユルユルになってしまった・・・*
つい嬉しくなってもう1度改めて自己紹介をしてしまう。
「私はさっきもいったけど、ショウノ コスミ。
 ここはほとんど初めてといっていい感じだよ。
 年齢は一応13歳だけど、アンドロイドだから関係ないかも・・・」
「・・・ん?」
・・・と、シュンの表情が止まった。
あ、アンドロイドとかって言わない方が良かったのかな・・・
私は一瞬心配してしまったけど、
その心配は無用なものだとすぐ分かった!
「君もアンドロイド・・・なんだ・・・」
彼は真剣なまなざしで私を見つめた。
「ふえ??」
今度は私が表情を固まらせる番だった。
「君も」・・・??って事は−・・

「実は、僕もここで作られたアンドロイドなんだ。
 自分以外にアンドロイドなんて居る訳無いと思っていたけど、
 そっか、いたんだ・・・」
そう、シュンもアンドロイドだったのだ!
私はただ唖然とするばかりだった。
だって、
だって仲間が・・・・居たんだから。
「私もいないとおもってたんだ。
 でも、一人じゃなくって良かった。」
そう同意しながら、私は嬉しい気持ちでいっぱいだった。
「これから、よろしく・・・ね。」
「こちらこそ。」
と、シュンも少し嬉しそうに頷いた。
そしてこう続けた。
「それはそうと、もう一人、僕のいとこを紹介するよ・・・。
 一応ここの部屋なんだ。
 まあ親戚だからアユムさんが配慮して同室にしてくれたんだけど、
 ハッキリ言ってお互い気合わないんだよね・・・。
 でも、コスミと歳が近いし、女の子だし、君とは仲良くなれるかも知れないから、
 一応紹介するよ・・・」
言うなり私の手をとって部屋に案内した。
忘れてたけど、私たちは入り口に居たんだった。


中に踏み入れると部屋はがらんとしていてあまり生活感がなかった。
もっぱら寝るためだけの部屋のようだ。
肝心のベッドは壁に取り付ける式で、
上下二段に取り付けてあってはしごが掛けてあるのが右にあり、
残りの一つが正面に取り付けてあった。
シュンはちょうどその一つ孤立しているベッドを指差して
「この子が僕のいとこのマユチカ ココ。
 12歳だよ。今、中学一年生。」
とそっけなく説明した。
「へえ。」
私が見ると、ベッドには背の小さそうな子がすーすーと吐息をたてて眠っていた。
その寝顔を見る限り、とっても優しそうな感じのする子だった。
シュンはこの子のどこが気に入らないのかな?
と、そんな目でみていたのかもしれない。
シュンはちょっと顔をしかめて
「こいつ、コスミが来たときにこっちの部屋で鳴った警報にもきづかなかったんだ。
 僕は急いで飛び起きたんだけど・・・。
 
 でも・・・。
 この子が起きてなくって逆に良かったかもしれないね。
 この子普段は穏やかなんだけど、
 敵に遭遇すると途端に非情って言うか、人格が変わるから。
 君ももしかしたらケガをしていたかもしれないよ・・・」
と、私を厳しい瞳で見つめた。
「はあ・・・」
ここの人っていまいち普通じゃない気がする・・・。
でも、そんな私の考え事など知る由もなく、シュンはまったく別のことを考えていたのだった。
「よし。
 そうと決まれば。報告データ作成しなくちゃね・・・
 君のも追加しておいてあげるよ」
「え??な、なに?」
 と、わたしが我に帰って、混乱していると、シュンは疲れた顔をして、
「もう眠いからこれについては明日説明してあげるよ。
 なんなら、アユムさん叩き起こして聞いてもいいし・・・」
などと半分やけの口調でパソコンをバタバタたたいた。
「んじゃ。おやすみ・・・。
 君のベッドは僕のベッドの上ね・・・。」
あっという間に作業は終わったらしく、
シュンは部屋の明かりを消してとっとと自分のベッドについてしまった。

あの・・・暗くてまたしても何も見えないんだけど・・・。


                               ーつづくー


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