− 14 − 彼の人との障壁
「ふぅ、この辺りには誰もいないみたいだね・・・」
と、シュンが包帯を巻きながら話し掛けてきた。
って言っても、勿論のんびり座っている訳ではなく、歩きながらのこと。
同じ場所に留まっていたら、
さっきの戦闘の音を聞きつけた敵と鉢合わせになるかもしれないからね。
そうそう、
彼はいつも薬付きの包帯を携帯しているらしかった。ぬ、抜かりがない。
ほら、
今だってポケットからおもむろにチョコレートなんかを取り出して、
私の前に差し出してくれる。
「おなか空いてない??
対した物じゃないけど、疲れが取れるよ・・・」
「あ、ありがとう」
それは一口サイズのチョコレートだったんだけど、
不思議なことに手にとってみると、ひやりと冷たかった。
「え・・・?これ・・・」
私がまじまじと手のひらのチョコレート包みを見下ろしていると、
シュンは意味ありげに微笑んで
「あ、気付いた?
これ魔法がかかったチョコレートなんだ。
いわゆるマジックアイテムってヤツだよ・・・」
ともう一個を自分の口に入れながら言った。
「効果とかあるの?」
私はそう聞かずにはいられなかった。だって、シュンの微笑み方が怪しかったんだもん。
するとシュンは端正な顔をわざと歪ませてこう言った。
「さぁ?何だと思う・・・?フフフ・・・」
「うう・・・」
私が困った顔をするとシュンはパッといつもの顔に戻って、
「ただ冷たいってだけだよ・・・。そっちの方がおいしいから」
と首をかしげた。
ま、ますます怪しい。
この子(と言っても年上だけど)・・・あなどりがたいです。
「まあ、後で食べるって手もあるから、
ポケットにでもしまっておけば・・・?」
と、彼は薄い笑みを絶やさずに歩みを速めた。
結局、私はシュンの言うとおり、
そのチョコレートをポケットにしまっておくことにしたのだった。
「ねえ、シュン。さっきのって魔法??」
と、私。
しばらく歩いたんだけど、いまだに敵の気配はなく、
思いついたままを尋ねてしまう・・・。
でも、彼は何でもこころよく答えてくれたのだった。
「ああ、さっきイーターを倒したときの・・・?
クリシアって言う炎系の魔法だよ。
ぼくの得意魔法で、範囲は狭いんだけど威力はすごいんだ。
まあ、まだまだ未熟だけどね・・・。
流石にアユムさんほどとはいかないよ。」
そんなシュンの横顔があまりにかげって見えたので、
私はとっさにフォローした!
「そんな・・・。
そんなことないよ。
だって、アユムのよりシュンの魔法の方が、光とかすごかったもん!」
見たことそのままを言ったつもりだった。
でも、シュンは首を振るばかりだった・・・
「魔力と言うのは、光に変わりやすいんだ・・・。
物理のエネルギーが熱に変わりやすいのとおなじでね。
でも、攻撃するときに光を発しても意味はないだろ?
だから、ぼくらは出来るだけ魔力を破壊力に変えようとするんだけど・・・、
やっぱり魔力を光に変えるのに比べて破壊力に変えるほうが難しいんだ。
だから、さっききみが言ったそれは
アユムさんに比べて僕の方がコントロールが利かないってことを意味しているんだ。
僕の方が魔力を破壊力に変える割合が少ないのだから」
そ、そうなんだ。
うう、傷つけること言っちゃった・・・。
私が思わずへこんでいると、
シュンはフワフワした羽根のついたロッドを振りながら、慰めるように笑った。
「コスミ、そんなことでしょんぼりしないで・・・
本当のことだからしょうがないよ。
それに、ぼくとアユムさんだって犬猿の仲って訳じゃないんだ。
こう見えて結構仲良いんだよ」
「そうなんだ・・・。
よかった・・・。」
と、私。ほっと胸をなでおろした。
でも、なんだろう・・・彼の目を見ていると、
頭の中がぐるぐるしてくる。
それに、会話が会話で無いみたいな感じがしてくるんだ・・・
ふよふよとして、なんかつかみ所が無いと言うか、
所在が無いと言うか・・・
正直、気だるい・・・
わたし、
・・・シュンといると
つかれるのかな・・・
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