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どんな風な道のりだったかはよく覚えていない。
曲がり角の数さえも曖昧で、
まるで、そこだけ記憶が飛んでしまったようだった・・・。

(雨が酷くなってきたな・・・)
後ろを振り返ると、ぐっしょりと全身を濡らしたショウゴが歩いてくる。
遅いと分かっていながら、アユムは傘を分けてやった・・・。
「ほら・・・」
「おう。サンキュー」
笑いかけるショウゴ。ごくありふれた普通の会話。

つかんでいたはずの平凡な幸せ・・・・。
自分もたわいもない生活を送るのだと思っていた・・・あの日・・・。

今の自分と、昔の時の自分を比べ、アユムは不思議な気持ちになった。
(今の俺を形成している根源はなんなのだろう?)
ふと、思いつく・・。
(昔の俺と今の俺は根底から違っていたような気がする・・・。
 昔の俺は、
 右に習い、人を真似し、人と関わりを持つ事を良しと思っていたのに・・・。
 アレはなんだったんだ??
 今の俺は・・・そんなことどうでも良く思っているというのに・・・。)
とめどなく地面を打つ雨水の音が、
思考を緩急にさせていた。
(わからない・・・。
 いつから俺は、今の俺になったのだ?)

・・・と、
ボーっと考えていたら、突然右腕を掴まれた!
「おい、キリハラ。着いたぞ・・・」
ショウゴだった。
前方を見ると、そこには体育館と思しき建物が一つだけポツリと建っている・・・。
勿論アユムが思い出す限り、
学校に体育館しか建っていないなんてそんなバカな話はないハズだった。
実際の過去の学校には、校舎だってあったし、校庭にだってサッカーゴールくらいはあったのだから。
(この空間には、体育館しか必要ないんだろうな・・・。)
アユムは顔をしかめて、校庭の泥を蹴った。
そうだ。ここは何者かに作られた世界・・・。
今、自分はそこに閉じ込められているんだ。

「ぬかるみ具合が最悪だな・・。」
今の心情を事象と混ぜて言葉にするとこんな感じになる。
「おい。キリハラなにやってんだぁ??早く来いよ。」
自分の置かれている状況を思い出すと無性に腹が立った。
アユムは不思議そうに首をかしげるショウゴを憎憎しげに睨み付けると
「分かったよ」
と、わざとらしくため息をついたのだった。
(誰だか知らないけど、
 俺がおまえの思い通りになると思ったら、大間違いだ・・・!)
      ・
      ・
      ・
雨はさらに強さを増し、轟音となって屋根を打っている・・・。
風の強さも倍になり、
悪いお天気宜しく天候は大嵐へと変貌を遂げていたのだった。
しかし、
その中でアユムは、
かれこれ20分近く立ち止まっている・・・。
ショウゴも同じだった。アユムの横で、ボーっとしている。
体育館に入ろうと思えば入れたのに、
二人は体育館の屋根に入る約30センチ手前で足をとめているのだ。

なぜなら、
薄暗い体育館の中で、ユイカが一人舞っていたから・・・。

ユイカが体育館の暗がりの中、静かに舞い狂っているのだ。
舞っているというより舞い狂っているといった方が的確なように思える。

地に足が着くことはほとんどなくて、
飛んでは回り、回りながら空中を飛んで、
ユイカはいつ終わるとも知れない踊りを踊っていた・・・。
力が入らずにふわふわと舞う様は、人形のようで。
すくなくともアユムは、
途切れさせるに惜しい光景だと思った・・・。
耳のそばでは雨の音が絶えず流れていて、風は凄い強さでアユムの顔を打ちつけている。
ただひとつ、
ユイカの居る体育館だけが別世界だった・・・。

鈍く光るフローリングの床があって、
闇があって・・・。
バックには音楽も鳴っていた。
かすれてよく音が聞き取れなかったけど・・・、
ユイカは雨音にかき消されるほどの小さな音で陽気な音楽をかけていた。
もっとも、
視覚的な印象があまりにも鮮烈で、アユムにはそんなことに気を配る余裕さえ無かったかも知れないけど・・・。

ふと、
どうして気が付いたのか、ユイカがアユムのほうに顔を向ける。
「あ。アユム」
このときにはもうお互いに下の名前で呼びあっていたらしい・・・。
これはユイカとアユムに限ったことではなくて、ショウゴもそうだった。
あの桜の日の会話の後、ユイカがショウゴに声を掛けたため、
計画実行云々の関係で、何かにつけて3人はいっしょに行動していたのだ。
「来ていたんなら声掛けてよ。
 そんな雨の中で待っていなくてもいいのに・・・」
と、ユイカは口元だけを少し笑わせて、アユム達のほうへと歩いてくる・・・。
「いや、別にいいんだ。ユイカ。
 こっちこそ邪魔しちゃってごめん・・・。」
すまなそうに眉を寄せるアユムにユイカは小首をかしげた。
「邪魔って・・・、
 ただ単に私が踊りたかっただけだし、気にしないで・・・。
 二人を待つ間のヒマを持て余していただけよ・・・。」
「そ、そうか・・・。」
ユイカのあまりにそっけない態度にアユムはちょっとたじろいた。
彼女が踊りを見られたということに対して何も反応を示さなかったことに驚いたのだ。
(普通は恥かしがるとかするものだろうに・・・)
ユイカにはたまに、こんな妙に人間性を欠いた行動が見られたのだった・・・。
身が入っていないというか、何かがすっぽり抜けているというか、
とにかくユイカには何か「足りなさ」のようなものを感じるところがあった。
アユムも時々、
そんな彼女の世界に自分が重なるような錯覚を覚えていたものだ。
(なんだか、醒めきらない・・・。
 余韻が残っていて・・・)

アユムは何か悪いものでも振り払うように頭を左右に振ったのだった。




ザー−ザーザー−−−−−


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