ー 18-2 ー   


(・・・・・・・)
アユムには何がなんだか分からなかった。

そう、確かに、ビルから落ちたあの時は血を流したと思う。
でも、死んだ訳ではなかったはずだ。
だって、
現に今、自分は生きているのだから・・・。
(・・・・・・・)

ただ、嫌な予感はおさまらなかったのだ・・・。
自分は生きているのに、そういう事実があるのにもかかわらずに、だ。
ショウゴのあまりに悲痛な叫びが気になって・・・
絶望的な表情が気になって・・・

ザ・・・ザザ

画面は少々ブレながらも、消えはせずに、再び上体を起こす。
今度の高さは、人がしゃがんだ時くらいだ。
(あっ・・・・)
と、ここで初めてユイカがうつった。
彼女はうつむき加減で、何かをブツブツと言っている。
しかし、雨の音が邪魔でよく聞き取れない。
少しの間待ってみたけど、
(・・・口の動きで読み取るか・・・)
と、アユムはとにかく画面に注意して、その口の動きを追った・・・。
(「ア・ア・イ・ア、ア・ア・イ・イ・ア・ウ」・・・・?)
母音に直してもさっぱりだ。
結局不可解は不可解のまま・・・。
結局アユムには、ユイカがもう少し大きい声を出してくれるのをじっと待つ他なかった。

「だめだ、それは。」
突如、ユイカが大きな声でしゃべる前に、ショウゴのよくとおる声が響いた。
彼にはユイカの言っていることが聞こえたらしい。きっと、今のはそれに対する反応だ。
アユムが神経を鋭敏に聞く中、ショウゴはユイカの頭をなでながらこう言った。
「オレがかわりになる・・・・。
 こいつの代わりになる・・・・」

ア・ア・イ・イ・ア・ウ
か・わ・り・に・な・る

突然、アユムの中で、言葉が一致した。
ショウゴの言葉がヒントになったのだ。

じゃあ、
ア・ア・イ・ア、は?
(ショウゴの言葉と連動させて考えると、
 「わ・た・し・が」か・・・?)
つなげてみると「私が代わりになる」。意味の分からない言葉だった。

「でも、それじゃあショウゴが・・・。
 不公平になるよ・・・」
画面の中でユイカが顔をあげて訴えている。
見ると、もともと白かった肌の色はさらに白さを増し、
唇は寒さの所為か紫色に変色している。
そして、何かにおびえるように震える肩・・・・。
(なんて、
 ・・・・哀しい表情・・・・)
アユムはもうこんな二人を見るのがイヤだった。
なんでこんな顔をしているのか、今だ分からないくせに・・・。

「おまえは良いんだ・・・・。ここまで来ただけでも偉いよ・・・。
 だからこれからは、自分のことを考えろって。
 いいんだよ、オレは。友人のために死ねるなんて素敵じゃないか・・・」
(友人・・・・?
 ・・・・それは誰だ?)
アユムの中で嫌な予感がどんどん広がっていった。
なんだ?
二人は何をしようとしているんだ??

「アユムには、このこと内緒でな・・・」
ショウゴはにっこりと笑って、ユイカを促した。
でも、ユイカは首を縦に振らない。
「駄目・・・・。ショウゴ、死ぬの凄く怖いでしょう?
 私なら大丈夫・・・。アユムのためなら自分がどうなっても良いから」

(俺のため・・・?俺のためだって!?)

もはや疑う余地は無かった。よく分からないけど、確かにアユムのためなのだ。
自分のために、二人はまさに今、何かやばいことに足を突っ込もうとしている。
止めなければいけなかった。
でも、またしても自分の本能がささやくのだ。

ー 止めないで見ていようぜ ー

と・・・。

(止めると何か俺に都合の悪いことが起きるのか・・・?)
動物の本能というものは常に自己中心的だ。
自分さえ良ければそれで万事OK。そんな機能なのだ。
アユムはそれに従うかどうか少し考えた。

(・・・)
結論はすぐに出た。
身体が、行動することを拒絶している。
今までで味わったことの無い危機感を感じている・・・。
(こわい・・・・。
 凄くこわい・・・・!!)
アユムにはその恐怖に耐えるだけで精一杯だった。



続き→



*フェイクのTopへ*