ー 19-2 ー
− ごめんなさい。 −
・・・とその時!!
不意にアユムの頭に声が響いた!!!
「・・・うわ、げほっ」
びっくりしすぎて咳き込むアユムさん。気、弱すぎ。
と、
「スミマセンね。
人をおちょくるのが私の性分なんですよ」
目の前でぴょこぴょこ跳ねていたハズのウサギが、
いつの間にかアユムの目の前で、背伸びしてじいっとこちらを見つめていたのだった!
「んんっ!?」
と、アユムは二、三歩あとずさった。
だってこんな経験、多分彼の一生の中で今が初めてだと思う。
ウサギが人間のように口を動かして喋っているなんて、ね。
(な、なんじゃあ?)
ウサギはそんなアユムに対し、やけに紳士的にお辞儀をしたのだった。
「はじめまして。キリハラアユム さん。
ここはベアレイセ。
すべてがおわるとき、なにもかもが還ってくる場所」
「はあ・・・」
アユムは大人しくウサギの言うことに耳を傾けた。
要するに、今起こっていることが訳分からな過ぎて、彼の思考は半ば停止気味なのだ。
「何でおまえ喋っているんだ?」
とりあえず最初にして最大の疑問をぶつけてみる。
すると、ウサギは目をしばたかせてこう返してきたのだ。
「喋ってはいけませんか?」
「い、いや。かまわないけど・・・」
アユムはあきれ気味に答えた。
ウサギはそんなアユムの様子を察知したのか、彼に説明を試みることにしたようだった。
「常日頃、あなたの知らないところで、
物事は進行しているものですよ。
だいたい、あなただって路上の草の一本一本の推移や、小さなアリの生涯など
いちいち全てのものを把握しては居ないでしょう・・・」
「で、でも、それにしたって・・・」
(おまえは明らかにおかしいぞ!)
アユムは心の中で言葉を飲み込んだ。なんというか、眩暈がしてくる。
しかし、ウサギはそんなアユムを諭すように突拍子の無いことを口にしたのだった。
「物事というものはお互いに認識することで初めて存在することが出来るのです・・・。
魔法物質もその例外ではない。
今まで、魔法物質の方は人々を認識していたのですが、あなた方のほうが認識していなかったため、
存在しなかっただけなのです」
「・・・」
アユムはだんだんと普段の思考力を取り戻していった。
(ニンシキとソンザイ。
確かにこの二つには密接なつながりがあると言える・・・。)
こまぎれの言葉が少しずつ組み合わさっていく。
(認識されてはじめて、存在が始まる・・・。不動的なものが動的に変わる瞬間・・・・・)
一方、ウサギは微動だにせずに口だけを動かした。
「しかし、今、
あなたはシュストーユという魔法物質を発見してしまった。
そのことによって魔法物質は存在を開始したのです。
あなたの知る範囲、「どこにでも」・・・・ね。」
「どういう意味だ?」
と、アユム。
ウサギはむぐむぐと口を動かしながらアユムを見た。
「此処にあるもの、全ては魔法物質が生み出す原理でできているのですよ。
わたしもそうです。
だから実はこう言うことが起こっていたのです。
あなたの魔法物質の発見が、間接的に私たちを存在させた」
「・・・・・信じがたいな。」
アユムは素直な感想を述べた。
「つまりおまえは、おれの魔法物質への認識が、
それを世の中に存在させ、同時に、
おれが認識する全ての事物に「魔法物質」というカテゴリーを追加してしまったと言いたいのだな?」
「そうです」
ウサギは静かに答えた。
でも、アユムはまだ腑に落ちない感じだった。
「でも、おかしいじゃないか!
世の中に魔法物質というものが存在したところまではともかく、
同時に魔法物質と他の事物の関連付けが行われるなんて、
そんな事は今までの発見物にはなかった!!」
「そうですね。
しかし、魔法物質の存在が開始された一瞬、何か「変なこと」が起こったのかもしれません。
例えば誰かの思念の反射とか・・・」
「は??」
ウサギの発言に、アユムはまたしても首を傾げた。
(思念の反射??
誰かが、魔法物質のカテゴライズを願ったということなのか?)
しかし、ウサギはその答えを簡単には与えてくれないらしく、
ニヤリと笑ってこう言った。
「まあ、それはあなたが確認すればよいこと。
今必要なのはゲンジツです」
彼は身軽に宙返りして見せると、
サーカスのピエロよろしく、アユムに自分の後をついて来るよう促した。
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