ー 7 ー いどころとなりしところ
ケイは、この前にあの変な生き物と出くわしたところまで私を連れてくると、
私のほうを見てこう言った。
「この廊下をまっすぐ行けば君に割り当てられた部屋につくんだ。
たしかアユムさんはここでイーターに出くわしたって言ってたけど、そうなのかい?」
イーターってあのへんな生き物のこと??
あ、そういえばアユムもそんな風に言ってたっけ・・・
「はい・・・」
私は答えた。しかし、そう言いつつもその生物のことは思い出そうとすると変な感じがした。
いくつも折り曲げられた腕、まだらな赤紫の肌・・・
でも、どこか自分と共鳴する瞳・・・
「あれって何なんですか・・・?」
私がいくぶん顔をこわばらせて問うと、ケイは目の前に伸びる廊下の先を見据えながら顔を引きつらせた。
「あれは、ここの研究者達が実験で生み出した生物の中の成功作らしいよ。
強力で・・・且つ・・・言うことを良く聞く従順な性格の成功作。
君が出会ったのはきっと、オリから逃げ出したヤツだ。」
「・・・」
ここで私は不思議に思った。
オリから逃げ出した?「従順な性格」なのにー・・・?と
ケイも私の言わんとしている事が分かったらしく、こんな風に追加説明をしてくれた。
「そいつは・・・きっと・・・、
革命者だったんだよ・・・
今までの、偏った思考をくつがえす事ができた・・・
でもそれは、俺達にとっては厄介以外の何物でもなかったけど・・・」
ケイは寂しく笑った。
「そういえばアユムさんも、この前変なことを言っていた・・・
「自分は革命者にはなれないだろう」・・・と。
なぜと聞いたら、「自分にはそれだけの思考のパタンが無い」って」
「??」
アユムが言ったことなのに、
ついケイをいぶかしげに見つめてしまった。
それを見て、ケイは乾いた笑みを私に見せた。
「そう、意味分かんないだろ?
でもほら、俺って好奇心旺盛だから、それがどういうことか知りたくなって聞いてみたんだ。
そしたらアユムさんついに折れたのかちょっと笑って
「俺はいろいろと欠け過ぎている。もう・・・ダメになっている・・・」って言っていた。
・・・やっぱりこの意味もよく分からなかったんだけど、
でも俺は・・・同時にちょっとビックリしたんだ。」
「なぜですか?」
私は最近問い掛けてばかりいるなぁ(-_-)うぅ・・・
でもケイはなんにでも正直に応えてくれた。
「なんか・・・それまではアユムさんって万能ってゆーか、
無敵みたいに思っていたところがあったから。」
ケイの声は少し震え気味だった。
「あんなことを
口にするとは思わなかったんだ。なんとなく」
その声は恐れさえも混じっているように聞こえたけど、それがなぜなのか、やっぱり私には分からなかった。
でも、
おかしなことを言うけれど、
無論、ケイには解っていたのだった。
ーだからそうなのかー・・・?あの人がよわいから?ー
「たまに先に進みたくなくなるとき、あるんだ・・・」
ケイは私に聞こえるようにとでもなく、
かすかにつぶやいた。
・
・
・
「ここだよ」
しばらくしてケイが足をとめたのは厳重に閉ざされた金属製の扉の前だった。うーん、セキュリティって感じ・・・
「ここ・・・ですか??」
と私。
「うん。
もう夜遅いから、中は二人とも寝てると思うけど」
とケイ。彼はそういいつつ、扉の横についている電卓のようなものを押しはじめた。
「何ですか??それ」
と私は覗き込むようにしてたずねた。
テレビドラマとかでよく目にするからセキュリティの一環だとは分かったけれど、
一応聞いてみないとね++
「ID入力機。
要するにこれに設定された番号を入力すれば扉が開くんだ。ソレダケ。」
ケイは入力に集中しているのか
依然としてその入力機を見つめたまま短く言った。
うー、邪魔しちゃったかな・・・。
でも、
私としては思ったとおりの答えが返ってきてちょっと安心した。
ここって分からないことだらけだと思っていたし・・・。
特にアユムが不思議な言葉を良く使っていたからかも知れないね・・・。
また、ケイはこうも言った。
「あまり関係ないけど、
例の実験生物脱走ことがあってからIDの桁数増えてさ。
押すの大変なんだよね。
ってゆーか俺のオツムじゃ覚えられない次元になってきてるよ、ほんと。」
「あはは」
ケイのなんとも軽い感じが、私を安心させた。
一瞬、
ここってそんな怖い所じゃないんだと思えた。
「これでたぶんオッケイ。
えいっと」
ついにケイがIDを入力し終えたみたいだった。
「みたいだった」ってゆーのは
何も起こらなかったからなんだよね。
でも、ケイはにっこり笑って
「あとこの青いボタンを押せば開くから。」
といってきびすを返した。
「え、え??」
私が戸惑っていると、彼は私に背を向けたままこういうのだった。
「俺はもう自分の部屋に戻るよ。
メンバーと仲良くね。」
「え、でも」
と私。急に心細くなる。
でもケイがこっちを向くことはなかった。
「・・・あっと。
それから、俺の特技は未来を予知すること。
今後とも宜しく*コスミちゃん」
それだけ言って足早に去っていってしまった。
「は、はい」
とっさに返事をしたものの、
私は、
ケイの言葉をよく分かっていた訳ではなかった。
未来を予知することが・・・特技??
変なことを言う人・・・。
「とにかく中に入ってみよう」
私はケイの背中を見送った後、
早速、入力機の青のボタンを押してみると、扉は難なく左右にスライドして開いた。
中をのぞくと、電気を消しているのか真っ暗で何も見えない。
(ケイさんが言ったとおり寝ているのかな・・・)
と私が恐る恐る部屋に踏み入れたそのときだった!!
・・・ヒュッ
何かが風を切る音がして首に固い感触がきた・・・
「動くな・・・」
その声は右のほうから聞こえた。知っている声じゃなかった・・・
私がなんとか首に当てられているものを振り払おうとすると、
その声の主は強く叫んで私を制止した。
「動くな・・・!!」
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